T.ジョニーT.の雑記帳

きまぐれジョニーの思いつきノート

THE MAGIC CRAFT サブエピソード1−1

こんばんは、TJTです。

本日の内容は、昨日まで掲載していたロールプレイングコミック"THE MAGIC CRAFT"iPhoneアプリ版のエクストラコンテンツとして書いたストーリーです。

本当は漫画で描きたかったけど、労力と時間の兼ね合いからノベル形式となりました。ザツい挿絵はご愛嬌で・・・(笑)

アプリ版は、ロールプレイングコミック同様自分の選択肢によってストーリーが変化します。いわゆる、昔で言うゲームブックですね。

この、はてなブログ版では一本のストーリーに再編成しています。

 

THE MAGIC CRAFT本編の主人公ダンの父親テッドは、ダンの実の父親ではありません。

本編の冒頭でも少し触れられている、青年時代のテッドとダンとの出会いを描いたエピソードです。

それでは早速。

THE MAGIC CRAFT サブエピソード1 "キャラバンの冒険"

始まるよ〜! 

f:id:goodpencil:20171103190110j:plain

 

登場人物(年齢)

テッド・・・キャラバン「ハイウイングス」で働く青年。(20)

ミネア・・・カフェ「オーシャンズ」のマスター。(40)

クレア・・・ミネアの娘。(15)

シューマ・・・キャラバンの仲間。お調子者だが計算に強い。(21)

ビーゼ・・・キャラバンの仲間。寡黙な性格。剣の腕前は一流。(33)

ヘンデン・・・キャラバンの仲間。怪力な巨漢だが、お人好しですぐ泣く。(18)

ベーヴェン・・・キャラバンの団長。頭脳、パワー、人望を兼ね揃えている。(60)

オルグ・・・キャラバンの副団長。経験豊富で穏和な性格。(48)

バック・・・サイドベイタウンが故郷の魔導士。テッドの幼馴染。(20

 

 

1f:id:goodpencil:20171103192015j:plain

f:id:goodpencil:20171103192435j:plain

港町サイドベイタウン。大陸の貿易流通網の要である。港に面して赤レンガ造りの倉庫が連なり、町中のマーケットには露店が所狭しと並ぶ。常に活気溢れ、異国の文化が交差する貿易町である。

流通運搬業も盛んであり、数多くのキャラバン(隊商)がこの街を拠点として、大陸の隅々まで流通網を張り巡らせていた。

テッドはキャラバンの一つ「ハイウイングス」で働く20歳の青年であった。彼は行きつけのカフェ「オーシャンズ」に午前5時に訪れ朝食をとるのが日課となっていた。

早朝にもかかわらず、オーシャンズは毎日大勢の人で賑わっている。港町で働く男達の朝は早い。既に一仕事終えた者も少なくない。

「ちょっとこのベーコン焦げすぎだぞ」

カウンター席に座っていたテッドはベーコンをつつきながらつぶやいた。

「文句言うんじゃないよ、忙しいんだから」

カウンターの向こうで忙しく働くミネアの大声が帰ってきた。ミネアはカフェのマスターであり、テッドが所属するキャラバンの団長の娘でもあった。その威勢の良さと明るい性格で多くの常連から親しまれていた。

「そんな事より今日はアンタが小隊リーダーなんだろ?早く行かなくていいのかい?」

「ぼちぼち行くさ」

テッドは皿の上の残りのベーコンエッグを口に放り込むと、席を立った。

 外に出るとすぐに店の中から誰かが追ってきた。

「ちょっとテッド、忘れ物!」

ミネアの娘で、オーシャンズのウェイトレスとして働いている15歳の少女、クレアである。

「人にお弁当作らせておいて忘れて行かないでよ。」

「あ、わりぃ。サンキューな。」

テッドはサンドイッチと水筒が入った袋を受け取った。見るとそれぞれ二つある。

 「ひとつはおじいちゃんに渡して。ちなみにあんたのはツケだからね。」

そう言うとクレアは小走りで店に戻って行った。

「キッチリしてんなぁ。」

クレアが店の扉を締める前に振り返った。

「気をつけてね。」

「・・・おう!」

 

f:id:goodpencil:20171103192551j:plain

テッドはマーケットを抜けて港に向かった。マーケットは、メインストリートから一本入った通りにある。所狭しとひしめく露店には異国からの品物も数多く並ぶ。

テッドは出発前によくマーケットをぶらつく。目に飛び込む鮮やかな色の衣服や反物、みずみずしいフルーツや野菜。耳を震わす行き交う人びとの喧騒・・・。活気溢れるマーケットの空気が、これから始まる旅への気持ちを高めてくれるのだ。

「よぉ、テッド。調子はどうだ?」

露店の知り合いも多い。声をかけてきたのは薬の露店の店主だ。

「まあまあかな。なんか面白い品物あるのか?」

「新しいキズ薬が入荷したな。あと、外国で人気の魔法力を高める薬かな。魔導士じゃなくても一時的に魔鉱石の魔法を使えるって話だ。」

魔鉱石と呼ばれる石は自然の様々なエネルギーを凝縮し蓄える働きがある。そのエネルギーを自在に引き出し使う技は魔法や魔導術と呼ばれ、その技を使える者は魔導士と呼ばれた。魔法を使うには厳しい肉体的、精神的修練が必要であり、一般人には使うことができない。

「ふーん、まぁ、そもそも魔鉱石なんて、希少な上高価でおれには縁がねぇから、魔法使う事なんてまずねぇな。」

「だよな。でも栄養ドリンクとしての効能もあるみたいだから、一本買ってくれよ。一本100オアシでいいからよ。」

「どうせ売れなくて困ってんだろ。一本もらうよ。」

「へへ、悪りいね。まいど。」

テッドは長細い透明な小瓶に入った薬を受け取った。茶色の透き通った液体が入っている。ラベルには「マジックブースター7」と書いている。

テッドは薬屋の露店を去り、マーケットを抜けてキャラバンの集合場所へと向かった。

 

メインストリートを南に進むと港に突き当たる。

キャラバン「ハイウイングス」の活動拠点は港に面した倉庫の一つである。

赤いレンガの造りに、高さ5メートルはあろう重厚な木製の両開き扉が構えている。

テッドが半分開いている片方の扉から中に入ると、広く天井も高い倉庫の中には多くの木のコンテナや樽、布で包まれた彫刻や大きな機械の部品など、無数の品物が静かに出荷を待っていた。

倉庫の中央を縦に走る大通路には、キャラバンの団員が既に集まっていた。

ハイウイングスの団員は全員で33人。

旅の際には荷物の種別や目的地ごとに36人の小隊を編成する。テッドは今回、初めて小隊のリーダーを任されていた。

団員の何人かがテッドを見ると寄ってきた。

「よし、俺の小隊は揃ってるな。」

テッドがメンバーを見渡して頷く。

「一番最後に来てな~にを偉そうに。」

  丸い眼鏡をかけた男、シューマが言った。

「他の小隊はとっくに準備できてるぜ。」

目つきの鋭く浅黒い肌のビーゼがジロリとにらんだ。

「わかってるって。積荷は昨日全部確認してるから大丈夫だ。」

テッドが言うと、後ろからヘンデンが呟いた。

「半分以上はおいらが確認したでやす。」

「細けぇ事はいいじゃねぇか・・・」

ヘンデンは大柄な身体だがおとなしい性分の男だ。

 

f:id:goodpencil:20171103193002j:plain

その時、入り口から大きな人影が入ってきた。ヘンデンよりも一回り大きいその影は団員をゆっくり見渡し、低く響く声で言った。

「全員揃ってるな。」

ハイウイングスの団長、ベーヴェンである。2メートルの巨漢。白いヒゲに、鋭い眼光。禿げ上がった頭には昔の大きな古傷と刺青。圧倒的な存在感と威圧感がある。

今年60歳になるが、パワーや頭脳はまだまだ若い者には負けない。人望も厚くサイドベイタウンでは知らない者はいなかった。

「今日は平原を越えてカサキシティまで荷物を運ぶ。日没までには向こうに到着するぞ。暗くなったら物騒だからな。準備はいいか。」

「おう!!」

団員全員の気合いで倉庫内の空気が震え、仕事前特有の緊張感と高揚感でその場が満たされた。

「お前小隊長は今日が初めてだな。気ィ引き締めていけよ。」

ベーヴェンがテッドの肩を叩いた。

「おう、任せとけ!俺は次期団長になる男だぜ!?楽勝よ。」

テッドは胸を張って答えると、ベーヴェンはフッと口元だけで笑った。

「お、そうだ。クレアから団長の弁当を預かってる。」

「うむ」

ベーヴェンは弁当を受け取ると出発の準備に戻った。

「お前のビッグマウスはいつもヒヤヒヤさせるな、全く・・・」

シューマが肘でテッドを小突いた。

「俺は本気だぜ。いつか団長になってキャラバンもこの町も、もっとでかくしてやるんだ。」

「わかったよ。でもとりあえず今日はしっかり荷物運ぶのが役目だぜ、小隊長さんよ。」

 

TO BE CONTINUED...

 

次回もお楽しみに〜

(毎日更新予定!)