T.ジョニーT.の雑記帳

きまぐれジョニーの思いつきノート

THE MAGIC CRAFT サブエピソード1−6

初めから読む場合はこちらから

 http://goodpencil.hatenablog.com/entry/2017/11/04/200026

6

冷たく細い雨は降り続いていた。遠くで雷の轟きが聞こえる。

3頭の馬に乗った男達が道のない平原を歩いている。

「楽勝だったな、今日の仕事は。」

黒ずくめの服を着た、背の低い男がボソボソと喋った。 

「そうだね、お兄ちゃん!ボク、沢山やっつけたよ!」

丸々と太り、禿げ上がった頭の男がハスキーな声で返した。

「んもう、早く帰ってお風呂には入りたいわ。血の匂いが臭くてたまらないわよ。」

カラフルな服を着た、背の高い男がダミ声で言う。

「ん?後ろから誰か来るよ?」

3人は後ろを振り返った。テッドの馬がものすごい勢いで追いつき、3人の前に回り込んだ。

「・・・お前らか?」

テッドは聞いたが、答えを待つまでも無かった。3人の服には返り血が付き、馬の鞍にぶら下げた籠の中には魔法関連の荷物が無造作に積まれていたからだ。この3人がバックとキャラバンを皆殺しにした犯人である事は明白だった。

「何だ貴様は。」

背の低い男がムッとして言った。

「許さねぇ!ぶっ殺してやる!」

「お兄ちゃん、この人頭悪いのかなぁ。僕らに喧嘩売ってるみたいだよ?」

丸い男がトボけたような口調で言う。

「あたし達の事を知らないのねぇ。ドリム兄弟と言えば有名なのに。無知って怖いわぁ。」

背の高い男がやれやれと言うように首を振った。

ドリム兄弟についてはテッドも聞いた事があった。名の知れた3兄弟の盗賊である。

長兄イジフジーは子供にも間違えられそうなほど背が低いが、眉一つ動かさず人を殺す残忍な男だった。

次兄ニタッカは肥満体型で、無邪気で人懐っこそうに見えるが、人が苦しむのを見て面白がる人間だ。

末弟のサンナスは背が高くヒゲの剃り跡も青々とした男だが、女のような挙措動作や喋り方で、冷酷な性格だった。

この3兄弟の盗賊は少し前に捕縛され裁判で死刑判決を受けたと新聞には載っていた。

「ようやく脱獄したんだ。このままサイドベイタウンの港から密航して高飛びする邪魔は誰にもさせねぇよ。」

長兄イジフジーが低い声で呟いて、剣をゆっくりと抜いた。次兄ニタッカは弓を構え、末弟サンナスは馬の鞍から槍を引き抜いた。

テッドは盗賊を睨みつけ、護身刀を抜き払うと馬に乗ったまま盗賊に突進した。

 

f:id:goodpencil:20171103202437j:plain

テッドは長兄イジフジーに斬りかかった。すれ違いざま斬り結び、火花が散る。僅かにテッドの方が力が上だった。イジフジーの頬にかすり傷を負わせた。

「いける!」

テッドは素早く馬を方向転換させ、追撃を仕掛けようとした。

その時、ニタッカが矢を放ちテッドの太ももに命中した。

「・・・くそっ!」

テッドは痛みに堪え、体勢を立て直し、標的を変えて次兄ニタッカに斬りかかった。大型の弓を装備していたニタッカは、テッドに向けて矢を放ったが、テッドは怯むことなく剣で矢をはたき落とした。

「えっ?」

テッドの予想外の動きにニタッカは慌てた。そのままテッドは一気に距離を詰め、ニタッカの胴に渾身の一撃を打ち込んだ。

肋骨がへし折れる音がして、ニタッカは落馬した。地面でのたうちまわっている。

「い、痛い~!お兄ちゃん、痛ぇよ~!」

「馬鹿ね、ニタッカ兄さん。油断するからよ。」

サンナスが冷めた目でニタッカを見下ろす。イジフジーは見ようともせず、悶える弟を無視していた。

テッドは間髪入れず末弟サンナスに斬りかかったが、サンナスの長い槍に弾かれてしまった。槍の間合いは剣の倍以上ある。懐にさえ飛び込めば剣は有利だが、自由が効かない馬上の戦いでは圧倒的に不利だった。

鋭い突きがテッドの肩をかすり、服が破れ血が散った。テッドはバランスを崩しながらもなんとか踏ん張った。

その隙を狙ってイジフジーが斬りかかってきたが、テッドが体勢を立て直す方が一瞬早かった。斬り結んだ瞬間、イジフジーの剣が宙を舞い、草むらに落ちた。

「ちっ!」

イジフジーは舌打ちし、懐から小型の拳銃を取り出した。銃口が縦に二つ並んだ二連式の単発銃である。

しかし、イジフジーが銃の狙いを定めるよりも、テッドの剣がイジフジーの顔面にめり込み鼻をへし折る方が早かった。

イジフジーは大量の鼻血を吹き出して落馬した。地面に突っ伏して倒れ、ビクンビクンと痙攣している。

「次はお前だ!」

テッドは獣の様に吼え、サンナスを睨みつけた。

「全く・・・イジフジー兄さんも情けない。嫌になっちゃうわ。ずっと雨の中にいて、あたしが風邪ひいたらどうしてくれるつもり、アンタ?」

サンナスはブツブツと文句を言ったが、テッドは聞いていなかった。

テッドはサンナスに突進した。間合いが剣の倍以上ある槍に勝つには懐に飛び込むしかない。

サンナスは鋭い突きを繰り出した。

テッドは身体を捻り剣で槍を弾き、攻撃を逸らした。

テッドは槍の柄を掴み、攻撃を封じつつサンナスの脳天を狙い剣を振り上げた。

しかしサンナスは思ったよりも力が強く、槍の引っ張り合いでテッドの手は振りほどかれてしまった。

テッドはその拍子に槍先で手を切ってしまい、バランスを崩した。

「ちっ!」

サンナスは鋭い突きを繰り出してきたが、テッドは身体を捻り攻撃をかわし、槍を真横から叩き斬った。

木製の槍の柄は乾いた音を立ててへし折れ、槍先は落ちて地面に突き刺さった。

間髪いれず、テッドはサンナスの脳天に強烈な一撃を見舞った。

サンナスは声ひとつ上げず、昏倒した。

「地獄に落ちろ!クズ野郎ども!」

テッドは息を切らしながら、倒れた三人に向かって吠えた。

 

TO BE CONTINUED...

 

次回もお楽しみに〜!